古代世界の驚異

マウソロスの霊廟

この壮麗な霊廟は亡き夫マウソロスを弔うため、カリアのアルテミシアによって建設されました。霊廟はギリシアの高名な彫刻家スコパス、ブリュアクシス、レオカレス、ティモテオスの手になる彫刻によって飾られ、その最上部にはクアドリガ(四頭立て馬車)とマウソロス、アルテミシアの彫像が置かれました。

ギザのネクロポリス

現在のカイロ郊外に位置するギザ台地はネクロポリス(死者の都)として余りにも有名です。ここにはクフ王の大ピラミッドと大スフィンクス、そして神殿群が建設され、遥かな古代からエジプトの象徴となっています。

アレクサンドリアの大灯台

アレクサンドリアのファロス島に築かれた灯台はBC305年からプトレマイオス1世によって建設されました。灯台の最上部には組み合わされた鏡が設置されて炎の光を反射し、130mもの高さがあったためにその光は夜間に100マイル離れた場所からでも見えたとされています。

アメン・ラーの神託所

アメン・ラーの神託所は現在のエジプトとリビアの国境付近に位置しており、その神殿の壁の一部は今も見ることができます。神殿に辿り着くために旅行者は広大で危険な砂漠を横断しなければならず、神託所目指して行軍していた軍隊が一人残らず砂漠に埋もれたという伝説が残されています。

ストーンヘンジ

ストーンヘンジは古代から現在に至るまで神秘に包まれています。イングランド南部のウィルトシャー州の平野に佇立する巨大な立石群はBC3000年からBC2000年の間に築かれたと考えられていますが、考古学的な証拠が少なく、これがなぜ作られたか、どのようにして使われたかなど現在でもよく分かっていません。

カルナック列石

フランスのブルターニュ地方カルナックの町外れには世界でも有数の巨石遺構が残っています。非常に広い範囲に立石とドルメン(支石墓)が並んでおり、これらの石を建立した目的については様々な説が提唱されています。記念碑や宗教的儀式、地震の予知のためという説もありますが、現在は天文学的な装置であるという説が主流です。

偉大なる都市バビロン

新バビロニア王国の王都であったバビロンはまさに偉大なる都市でした。それ自体が驚異である壮麗なイシュタル門やマルドゥクのジグラット、美しい神殿など数々の伝説に彩られています。中でも最も有名なものはネブカドネザル2世が作らせたと伝えられる空中庭園で、ビザンティウムのフィロンは空中庭園とバビロンの城壁を七つの偉大な建設物の中に選んでいます。

ナグシェ・ロスタム

これらの壮大な王墓群は山そのものを切り開いて作られており、アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世、クセルクセス1世、アルタクセルクセス1世とダレイオス2世の墓所であると考えられています。ナグシェ・ロスタムとは「ロスタムの絵」という意味であり、この遺跡名は岩壁に刻まれたイラン神話の英雄名に由来しています。

バムの要塞都市

現在のイラン南部ケルマーン州の都市バムの郊外に、パルティア時代に建設されたと考えられている要塞都市の遺跡が残っています。2003年の地震によって大きく損傷したものの、その建設物は驚くべき技術が駆使されており、採風塔と呼ばれる設備から上空の空気を取り入れて建物の中に送る初期の温度調節機構を備えていました。

オリュンピアのゼウス像

巨大なゼウス像は全高が13m、高名な彫刻家ペイディアスの手になるもので、杉材の本体を象牙と黄金で被っていました。このゼウス像は古代で最も有名な神像で、ローマ時代にも多くの史料に残されています。ペイディアスはゼウス像の小指に「カロス・パンタルケス(美しきパンタルケス)」と恋人の名を刻み、その名を永遠に留めようとしたと伝えられています。

ロードス島の巨像

ロードス島の巨像はアンティゴノス1世に対する勝利を祝い、太陽神へ捧げるために作られた巨大な青銅製の像です。太陽神ヘリオスの姿を象った全高30mにも達する巨像であり、港の入り口を跨ぐように立っていましたが、BC226年の地震の際に倒壊しました。結局像の再建は為されず、残骸は800年を経過した後にイスラムの商人に売り払われました。

大いなる神々の聖域

エーゲ海北東部に位置するサモトラケ島には現在も神殿群の遺跡が残されており、ここは古代では大いなる神々の聖域と呼ばれ、エレウシスの秘儀が行われる場所として知られていました。この宗教的儀式の全容は明らかになっていませんが、スパルタの将軍リュサンドロス、歴史家のヘロドトス、マケドニアのフィリッポス2世などの著名人が参加したと伝えられています。

オリュンポス山

神々が住まう山として神話などで有名なオリュンポス山はギリシアのテッサリア地方に存在し、標高2917mのギリシアの最高峰として知られています。ギリシア人はこの山の頂上からゼウスを始めとする神々が人間界を見下ろしてその運命を操っていると想像し、山そのものが聖域として古代から崇められました。

ダマーヴァンド山

ダマーヴァンド山はイランのアルボルズ山脈中部に位置する活火山であり、山脈の最高峰です。その美しい姿と火山という性質から、山はペルシア神話でも特別な役割を与えられました。ゾロアスター教の聖典では三頭竜アジ・ダハーカをこの山の地下に封印したとされています。

ベヒストゥン山

イラン南部ケルマーンシャー州のベヒストゥン山は岩壁に彫刻されたベヒストゥン碑文によって知られています。この碑文はダレイオス1世が即位の正当性を主張するために作らせたもので、碑文はエラム語、古代ペルシア語、アッカド語という三つの言語で刻まれています。エジプトのロゼッタストーンのように、ベヒストゥン碑文は古代の言語を解読する大きな手掛かりとなりました。

エトナ火山

シチリア島のエトナ火山は世界で最も活動が盛んな火山の一つです。ギリシア神話ではヘファイストスの住居がある山として知られていますが、その名は炉を意味するアトゥナというフェニキア語に由来するのではないかという説があります。またギリシア神話最強の怪物であるテュポーンが封印されている山でもあり、この怪物が暴れると噴火が起きると伝えられています。

ウェスウィウス火山

ウェスウィウス(ベスビオ)火山は恐らく世界で最も有名な火山の一つであり、過去数百年間にヨーロッパ本土で噴火した唯一の火山でもあります。最も有名な噴火はAD79年に発生し、ポンペイとヘルクラネウムの市民16000人が犠牲となり、その中には『博物誌』で知られる大プリニウスが含まれていました。

ヘラクレスの柱

ギリシア神話によれば、ヘラクレスの柱は彼の十二の功業の途中で作られました。それによると、彼は近道をするために地中海の入り口を塞ぐ山脈を棍棒で砕き、現在はジブラルタル海峡と呼ばれる海への通路を開きました。通路の両側に山脈の岩山が突き立ったため、それを合わせてヘラクレスの二本の柱と呼ぶようになったのです。

アルガエウス山

ギリシアの地理学者ストラボンはアルガエウス山を「全ての山々の中の最高峰」と書いています。現在はエルジェス山と呼ばれ、トルコ中央部の都市カイセリの近郊にある山で、標高は3916mに達しています。ストラボンは「日中は山の頂上から北に黒海、南に地中海が臨める」とも書いていますが、自身が登山したことはないようです。